、嫉妬、陰謀の手が加わって、おそろしい暗殺の計画が成り立った。
「奴を屠《ほふ》れっ」
「大村初め長州のろくでもない奴等が大体のさ張りすぎる。あんな藪医者《やぶいしゃ》あがりが兵部大輔とは沙汰《さた》の限りじゃ」
「きゃつを屠ったら、政府は覆《くつ》がえる。奴を倒せ! 奴の首を掻《か》け!」
 呪詛《じゅそ》と嫉妬の声が、次第に集って、大楽《だいらく》源太郎、富永|有隣《ゆうりん》、小河真文《おがわまさぶみ》、古松簡二《ふるまつかんじ》、高田源兵衛、初岡敬治、岡崎|恭輔《きょうすけ》なぞの政府|顛覆《てんぷく》を計る陰謀血盟団が先ず徐々に動き出した。
 五人は、その大楽源太郎の命《めい》をうけた、源太郎子飼いの壮士たちだった。
 隊長は、神代直人《くましろなおと》、副長格は小久保|薫《くん》、それに市原小次郎、富田|金丸《かなまる》、石井|利惣太《りそうた》なぞといういずれも人を斬ることよりほかに能のないといったような、いのち知らずばかりだった。
 狙ったとなったらまた、斬り損じるような五人ではない。兵器廠設置の敷地検分のために、わずかな衛兵を引きつれてこの京へ上《のぼ》っていた大村益
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