れ。たまりかねたか、
「めあては早乙女だッ。おれにつづけッ」
とびかかった腰本治右衛門――。
「ばか者めッ」
そのまま、退屈男の前へ金縛《かなしば》りにあったように立ちすくんでしまいました。
おそろしい目です。射通すようにおそろしい主水之介の烱々《けいけい》たる眼光です。
「………」
じりッと、そのおそろしい目が一足動いた――。
「た、たすけてくれッ」
悲鳴をあげて腰本治右衛門、お濠端の一団の中へ逃げこもうとした途端、奇ッ怪です。サッと、一本の槍の石突きが、当の一団の中から流れ出たかと思うと、物の見事に治右衛門のみぞおちへ、――治右衛門の身体は、投げ出されたように砂利の上へ叩きつけられました。
同時にお濠端の一団から、袴のもも立ちりりしい姿がバラバラととび出すと、この逆転にあけっにとられた腰本一味の者を片ッ端からとっておさえる。おどりあがったのは十五郎です。
「おもしれえことになりゃがったぞッ。ざまを見ろい。この野郎!」
とび出して、腰本治右衛門をしめあげようとしたのを、
「ひかえろッ。十五郎ッ」
主水之介の大|喝《かつ》が下りました。
「京弥も菊路もひかえい。下座ッ。
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