旗本退屈男 第十一話
千代田城へ乗り込んだ退屈男
佐々木味津三
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)神田明神《かんだみょうじん》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)三年|曲輪《くるわ》の水で
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「詫」は底本では「詑」と誤植]
−−
一
その第十一話です。少し長物語です。
神田明神《かんだみょうじん》の裏手、江戸ッ児が自慢のご明神様だが、あの裏手は、地つづきと言っていい湯島天神へかけて、あんまり賑やかなところではない。藤堂家《とうどうけ》の大きな屋敷があって、内藤豊後守《ないとうぶんごのかみ》の屋敷があって、ちょっぴりとその真中へ狭まった町家のうちに、円山派《まるやまは》の画描き篠原梅甫《しのはらばいほ》の住いがある。
大していい腕ではないが、妻女の小芳《こよし》というのがつい近頃まで吉原で明石《あかし》と名乗った遊女あがりで、ちょっと別嬪《べっぴん》、これが町内での評判でした。
そのほかに今一つ、世間町内の評判になっているものがある。住いの庭
次へ
全89ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング