旗本退屈男 第十一話
千代田城へ乗り込んだ退屈男
佐々木味津三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)神田明神《かんだみょうじん》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)三年|曲輪《くるわ》の水で

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「詫」は底本では「詑」と誤植]
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       一

 その第十一話です。少し長物語です。
 神田明神《かんだみょうじん》の裏手、江戸ッ児が自慢のご明神様だが、あの裏手は、地つづきと言っていい湯島天神へかけて、あんまり賑やかなところではない。藤堂家《とうどうけ》の大きな屋敷があって、内藤豊後守《ないとうぶんごのかみ》の屋敷があって、ちょっぴりとその真中へ狭まった町家のうちに、円山派《まるやまは》の画描き篠原梅甫《しのはらばいほ》の住いがある。
 大していい腕ではないが、妻女の小芳《こよし》というのがつい近頃まで吉原で明石《あかし》と名乗った遊女あがりで、ちょっと別嬪《べっぴん》、これが町内での評判でした。
 そのほかに今一つ、世間町内の評判になっているものがある。住いの庭
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