のばした槍はうかつにはなせない。はなした一瞬、槍ははねかえって、おそろしい石突きの当身が見舞うのは知れたこと、引きもならず、進みもならず、必死と槍の一方にすがってもたついているのを、
「小|癪《しゃく》ッ」
左から一槍が救いに走ってのびたが、また、いけない。寸前かるく体をひねった主水之介の右の小脇に、その穂先までがかいこまれてしまったのです。
「いかが! 敵を即座の楯とする、早乙女主水之介、無手勝流の奥義。お気に召しましたか」
「………」
「そのまま! そのまま! 突いてかかれば二つの槍につかまったお仲間が田楽ざしじゃ。次には同じく早乙女流、追い立て追い落しの秘芸御覧に入れる。――まいるぞ!」
十字に組んだ二本の槍を、ぐいと両脇でかかえなおしたかとみるや、槍先の二人もろ共、わが身もろ共、じりりッと、残る六本の槍襖へ押し迫りました。仲間を楯に来られては、もはや返るより他はないのです。
「賢い! 賢い! はなれず後退《あとさが》りが兵法《へいほう》の妙じゃ! ほら! 一尺! ほら! 二尺! 一人でもはなれたら、この石突きがお見舞い申すぞ! ほら! ほら! 突いてかかればお仲間が田楽ざし
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