も迷惑、小屋も迷惑、この位でもう御勘弁下さいまし」
「お旦那方がご自慢とは何じゃ! きさま、見くびっておるなッ。たわけものめがッ。出い! 出い! ここへ出い! こうしてやるわ!」
ピシャリ、と、理も非もない。初めから売る因縁、売る喧嘩だったと見えるのです。前後左右から木綿袴の小侍共がこぶしを固めて、小芳の兄の横びんをおそいました。
「喧嘩だッ。喧嘩だッ」
「出方はおらんか! おうい! 出方! 早く鎮めろッ」
どッとわき立つ人の波! 騒ぎの中を、六人の木綿袴は、なおピシャリピシャリとおそいました。
打たれるままにまかせていたが、なかなかに打ち打擲《ちょうちゃく》はやむ色がないのです。
刹那! 下総男、すさまじい豹変《ひょうへん》でした。
「さんぴん、よさねえなッ」
ダッと一躍、花道の上へ飛び上がると、パラリぬいだもろ肌いちめん、どくろ首の大|朱彫《しゅぼ》り!
「べらぼうめ! 下手に出りゃつけ上がりゃがって、下総十五郎を知らねえか! 不死身《ふじみ》の肌だッ。度胸をすえてかかって来やがれッ」
彫りも見ごと、啖呵《たんか》も見事、背いちめんの野晒《のざら》し彫りに、ぶりぶりと筋
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