ない故、五六匹、主計頭に土産届けようぞ。ぼんやり致してふるえおるその者共、早う眠らせい」
 自らもさッと躍り入ると、パタパタと三人を峰打ち。京弥の当て身に倒れた二人も交えて、ひと束にしながら長持の中へ投げ込むと、事もなげに言ったことです。
「美しい幽霊共じゃ。眺め眺めかえるかのう」
 早くも注進うけたか、歩き出したそのうしろの屋敷内に、突然、慌ただしく足音が近づくと、罵《ののし》るように言ったのは、まさしく主計頭の声です。
「やったな。出すぎ者めがッ。忘れるな! 覚えておれよ!」
「ウフフ。わはは。そこへお越しか。声の主に物申そうぞ。主水之介、今宵のことは内聞に致してつかわしましょうゆえ、二万四千石が大切ならば、以後幽霊なぞこしらえぬようにさっしゃい。曲輪育ちの女子《おなご》はな、千石万石がほしゅうはない。気ッ腑がほしゅうござるとよ。わはは。――誰袖源七! 六兵衛のところへ早う行けい。比翼塚建てましょうにと、嘆いておったほど物分りのよいおやじ様じゃ。めでたく身請《みう》けが出来たら、また好物の菓子折など届けろよ。念のためじゃ、七五郎達送り届けい。――では京弥!」
「はッ」
「三河でぐず
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