塊りが左右四方から厳重に守りつつ現れたのです。
ずいと近寄ると、
「まてい」
胆《きも》の髄までもしみ入るような声でした。
「わざわざ荷物に造って御苦労じゃ。手数をかけて相済まぬ。もうよいぞ。苦しゅうない。苦しゅうない。主水之介も人夫用意致しておるゆえ、そのままおいて行けい」
「な、な、何でござります! 差上げるべきいわれござりませぬ。こ、これはそのような――」
「そのような、何じゃと言うぞ」
「怪しの品ではござりませぬ。こ、これは、その、こ、これは、その――」
「何品じゃ!」
「ふ、ふ、古道具でござります。只今お主侯様《とのさま》から、もう不用じゃ、払い下げいとの御諚《ごじょう》がござりましたゆえ、出入りの古道具屋へ売払いに参るところでござります。御退《おの》き下されませい」
「ならばなおさらけっこう。身共、近頃殊のほか古道具類が好きになってな、丁度幸いじゃ。買い取ってつかわそうぞ。値段は何程でも構わぬ。いか程じゃ」
「………」
「早いがよいわッ。売るもひと値。買うもひと値。あとで品物に不足は言わぬ! 言うてみい! 何程じゃ」
「二、二千両程の品にござります」
「たった二千金か!
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