。いや、面白い。面白い。心覚えに致しておく要がある。今いちどそれなるうつけ者達ののぼせ番附《ばんづけ》呼びあげてみい」
「心得ました。大関は当家の伜源七どん、関脇は本石町油屋藤右衛門どのの伜又助どん。小結は新九郎身内十兵衛。張り出し大関が遠藤主計頭様というわけでござります」
「ようしッ。主水之介、傷にかけてもこの謎解いて見しょうぞ。六兵衛、火急に白木の建札十枚程用意せい」
 不思議な注文でした。糸屋六兵衛一家の者が総動員でこしらえた十枚の建札を、ズラズラと縁先へ並べさせると、墨痕琳璃《ぼっこんりんり》と書きしたためた文句がまた不思議です。

一、足の早き者。
一、耳敏《みみさと》きもの。
一、人の噂、もしくは世上の事どもに通ぜし者。
同じく人の悪口きくを好み、人のアラ探り出すが得手《えて》なる者。
一、博奕《ばくえき》を好む者にて、近頃ふところ工合よろしからざる者。
右の条々に該当する者共、この建札目にかかり次第予が屋敷へ参らば、金子一両ずつ遣わすべし。
 本所長割下水、傷の旗本、早乙女主水之介。

「ウフフ。あはは。さぞや亡者《もうじゃ》が沢山参ろうぞ。六兵衛、三ツ扇屋の亭主、安心い
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