ら闇に葬る所存じゃわ。その手筈大方もう整うたゆえ、今宵この通り前祝いさせたのじゃ」
「ウフフ。あはは! 竜造寺どの、お身も愈々|耄碌《もうろく》召さった喃」
「なにッ。笑うとは何じゃ。秘密あかした上からは、早乙女主水之介とて容赦せぬ。出様次第によってはこのまま生かして帰しませぬぞ」
「ウフフ。また槍でござるか。生かして帰さぬとあらば主水之介、傷に物を言わせて生きて帰るまでじゃが、隆光を憎しみなさるはよいとして、罪なき人夫を首にするとは何のことぞ。さればこそ、竜造寺長門守も耄碌召さったと申すのじゃ。いかがでござる。言いわけおありか」
「のうて何とするか! 隆光が献策致せし生類憐れみの令ゆえに命を奪られた者は数限りがないわ。京都叡山、天台の座首も御言いじゃ。護持院隆光こそは許し難き仏敵じゃ。彼を生かしておくは仏の教を誤る者じゃと仰せあったわ。さるゆえ竜造寺長門、これを害《あや》めるに何の不思議があろうぞ。憎むべき仏敵斃すために、人夫の十人二十人、生贄《いけにえ》にする位は当り前じゃわ」
「控えませい!」
「なにッ」
「十人二十人生贄にする位当り前とは何を申されるぞ。悪を懲らすに悪を以てする
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