これ悪僧|護持院隆光《ごじいんりゅうこう》めを亡き者に致す手筈じゃわ」
「なになに! 隆光とな! 護持院の隆光でござるとな! ――」
あまりの意外に主水之介の面にはさッと血の色が湧きのぼりました。当り前です。はしなくも竜造寺長門守が口にしたその護持院隆光とは、怪しき修法《すほう》を以て当上様綱吉公をたぶらかし奉っている妖僧《ようそう》だったからです。由なき理由を申し立てて、生類《しょうるい》憐れみの令を施行したのもその護持院隆光だったからです。――退屈男の口辺には自ずと微笑がほころびました。
「意外じゃ! 意外じゃ、実に意外じゃ。いやさすがは長門守どの、狙《ねら》う対手がお違い申すわい、それにしても――」
「何じゃ」
「隆光はいかにも棄ておき難い奴でござる。なれども、これを亡き者と致すにかような怪しきカラクリ設けるには及びますまいぞ。何とてこのような道場構えられた」
「知れたこと、悪僧ながら彼奴は大僧正の位ある奴じゃ。ましてや上様御祈願所を支配致す権柄者《けんぺいもの》じゃ。只の手段を以てはなかなかに討ち取ることもならぬゆえ、この二十五日、当道場地鎮祭にかこつけて彼奴を招きよせ、闇か
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