とは下々の下じゃ。隆光いち人斃すの要あらば正々堂々とその事、上様に上申したらよろしかろうぞ。主水之介ならばそのような女々《めめ》しいこと致しませぬわ!」
「………」
「身共の一語ぐッと胸にこたえたと見えますな。そうでござろう。いや、そうのうてはならぬ。男子、事に当ってはつねに正々堂々、よしや悪を懲らすにしても女々しき奸策《かんさく》を避けてこそ本懐至極じゃ。天下御名代のお身でござる。愚か致しましたら、竜造寺家のお名がすたり申しましょうぞ」
「………」
「いかがでござる!」
「………」
「主水之介は、かような女々しき、奸策は大嫌いじゃ。今なお槍をお持ちじゃが、まだ横車押されると申さるるか! いかがでござる!」
「………」
「いかがじゃ! 返答いかがでござる」
「いや、悪かった。面目ない。許せ許せ」
さすがに長門守、一個の人物でした。ガラリ槍を投げすてると、悄然としながらうしろを見せてとぼとぼと歩み出しました。見眺めて主水之介、それ以上にうれしい男です。
「お分りか。なによりでござる。お帰りならばどうぞあれへ。むさくるしいが身共の駕籠が用意してござる。京弥! 御案内申しあげい。権次! 権
前へ
次へ
全44ページ中42ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング