》りおったかッ。同輩ながら職席禄高汝にまさるこの大和田十郎次じゃ。屋敷に乱入致せし罪許すまいぞッ、者共ッ者共ッ。狼藉者捕って押えいッ」
声に、抜きつれながら七八人の近侍達が一斉に襲いかかろうとしたのを、
「何じゃい。何じゃい。わしのこの白髯が目に這入らぬかい。片腹痛い真似を致さば、こやつでプツリ御見舞い申すぞ」
咄嗟にそこの長押《なげし》から短槍はずし取って青江流《あおえりゅう》手練《てだ》れの位取りに構えながら威嚇したのは、九十一の老神官の沼田正守です。怯《ひる》んで一同たじたじと引き下がったのに苛《いら》ってか、十郎次が剃り立て頭に血脈を逆立てながら代って襲いかかろうとしたのを、一瞬早く退屈男の鋭い命が下りました。
「京弥、青道心《あおどうしん》を始末せい!」
「お差し支えござりませぬか!」
「投げ捕り、伏せ捕り、気ままに致して、押えつけい」
大振袖がヒラリ灯影《ほかげ》の下に大きく舞ったかと見るまに、もう十郎次は京弥の膝の下でした。
「ま! ……お見事でござります」
感に堪えたように目を涼しくしたのは菊路です。
「ウフフ。十郎次、ちと痛そうじゃな。その態《ざま》は何のこと
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