旗本退屈男 第八話
日光に現れた退屈男
佐々木味津三
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)蕭条《しょうじょう》として
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)ひとりや二人|徘徊《はいかい》して
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、底本のページと行数)
(例)※[#丸付きの「印」、233−下−1]
−−
一
――その第八話です。
現れたところは日光。
それにしても全くこんな捉まえどころのない男というものは沢山ない。まるで煙のような男です。仙台から日光と言えば、江戸への道順は道順であるから、物のはずみでふらふらとここへ寄り道したのに不思議はないが、どこで一体あの連中を置き去りにしてしまったものか、仙台を夜立ちする時はたしかにあの江戸隠密達二人と一緒の筈だったのに、日光めざして今市街道に現れたその姿を見ると、お供というのは眉間傷と退屈の虫だけで、影も姿もただのひとり旅でした。その上に着流し雪駄ばき落し差しで、駕籠にも乗らずにふわりふわりと膝栗毛なので
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