きき届け下さりまして、うれしゅうござります」
頃はよし!
ダッともろ手体当てに、雨戸を難なく押し破りながら、先頭に主水之介、つづいて京弥、あとから神官正守の順でいきなり広縁に躍り上がるや、ずいと先ず退屈男が静かに部屋の中へ押し入ると、悠揚莞爾《ゆうようかんじ》としながら、さらに静かに浴びせかけました。
「わッはは。俄か坊主、唐瓜《とうがん》頭が青々と致して滑《なめら》かよ喃。風を引くまいぞ」
「なにッ? よよッ! 貴公は!」
「誰でもない。傷の早乙女主水之介よ。江戸でたびたび会うた筈じゃ。忘れずにおったか」
「何しに参った! 狼狽致して夜中何しに参った!」
「ウフフ、おろか者よ喃。まだ分らぬか。三日前の夜、こちらの沼田先生にお伴《とも》して、百姓共をとり返しに参ったのもこの主水之介よ。そこのその旅姿の女も、身共の妹じゃわい。八万騎一統の名を穢《けが》す不埓者《ふらちもの》めがッ。その方ごときケダモノと片刻半刻たりともわが肉身の妹を同席させた事がいっそ穢らわしい位じゃ。主水之介、旗本一統に成り変って、未練のう往生させてつかわすわッ。神妙に覚悟せい」
「さてはうぬが軍師となって謀《はか
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