老体。沼田の御老体!」
「ここじゃ。ちゃんとうしろにおりますわい」
「……? なるほど、左様か。いつのまにおいでじゃ。これが主水之介の妹菊路でござる」
「そちらが御妹御御意中の御小姓か」
「と、まア、左様に若い者を前にして、あからさまなことは言わぬものじゃ。役者が揃わば手段《てだて》は身共の胸三寸にござる。すぐさま参りましょうぞ。……のう菊」
「あい……」
「そち、疲れておるか」
「あい、少しばかり。……いいえ、あの、久方ぶりに懐かしいお兄様のお顔を見たら、急に元気が出て参りました。何でござります、わたくしに火急の御用とは何でござります」
「それがちと大役なのじゃ。なれどもそちとて早乙女主水之介の妹じゃ。よいか。この兄の名を恥ずかしめぬよう、この兄に成り代ってこの兄にもまさる働きをするよう、充分覚悟致して大役果せよ。と申すはほかでもないが、当大和田の郷《ごう》に、みめよき女子と見ればよからぬ病の催す不埓《ふらち》な旗本がひとりおるのじゃ。領民達の妻女、娘なぞを十一人も掠《かす》め奪り、沙汰の限りの放埓《ほうらつ》致しおると承わったゆえ、早速に兄が懲《こ》らしめに参ろうと思うたが、わるい
前へ
次へ
全58ページ中41ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング