るうちに、何かと相談を持ち込むようになったのじゃ。それゆえ、一揆起すについても先ずわしに計ってと、あの通り大挙して参ったところを、御領主方でも知ったと見える。先程のあの鳥刺しめ、まさしく大和田十郎次どのから秘密の言い付けうけて参った者に相違ござらぬが、あやつめが四たび五たびとしつこく隙見《すきみ》して、何か嗅ぎ出そうと不埓な振舞いに及んだゆえ、脅《おど》しつけようと飛んで出たところへ、貴殿がふらふらと迷ってお出なすったという次第じゃ。それから先は御存じの通り、――それにつけても沼田正守、当年九十一蔵に至るまでまだ一度も女子《おなご》に惚《ほ》れたことはおじゃらぬが、男の尊公ばかりにはぞッこん参りましたわい。それ故にこそ由々敷大事の秘密まで打ちあけてのお願いじゃ。一揆を起すか刺し殺すか、どうあっても十郎次どのに今日のごとき非行お改めなさるよう、御意見申上げねばならぬ。いかがでおじゃろう、強《た》ってとは申さぬ。同じお直参のよしみもござろうゆえ、旗本八万騎にその位は当り前と、十郎次どのに御味方なさるならばなさるで、それもよし、少しなりとこのおやじに見どころがござらば、先程とくと拝見仕った尊
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