遊ばした女子《おなご》が都合十一人に及んだと申すのじゃ。娘が六人、人妻が三人、若後家が二人とな、いずれもみめよい者共をえりすぐって捕りあげたのは言うまでもないことじゃが、憎いはそれから先じゃ。十一人が十一人、人妻までも捕りあげて屋敷の広間に監禁した上、なおそれでも喰いあきぬと見えて、この次は何兵衛の娘、その次は何太郎の家内と、御領内残らずの女共の中から縹緻《きりょう》よしばかりをえりすぐって、次から次へと目星をつけているゆえ、領民共とて、人の子じゃ、腹立てるのは当り前でおじゃりますわい。それゆえ、つまり――」
「一揆の談合をこの境内でしたと申さるるか」
「左様々々。ひと口に申さばまだ談合中じゃが、相談うけたのが、何をかくそうこのわしなのじゃ。同じ御領内に鎮守の御社《みやしろ》を預かって、御家繁昌御家安泰を御祈願すべき神主が、由々敷一揆の相談うけたときかばさぞかし御不審でおじゃろうが、拙者、ちと変り者でな。神にお仕え申すこの職は、親代々の譲りものゆえ嫌いではおじゃりませぬが、それより好物はこの本じゃ。それから骨じゃ。別して医の道は大の好物ゆえ、御領内みなの衆にあれやこれやと医療を授けてい
前へ
次へ
全58ページ中22ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング