ざるな」
「左様々々。その助《すけ》と平《へい》がちと度が強すぎてな。何と申してよいやら、あのようなのも先ず古今無双じゃ。これなる床の軸にも見える通り、御先々代八郎次さまは至っての偉物《えらぶつ》でな、病気平癒の祈願を籠めてさしあげたは、かく言う沼田正守がまだ壮年の砌《みぎり》のことじゃ、それ以来当豊明権現を大変の御信仰で、あの一札にもある通り、貢納米《ぐのうまい》から労役人夫、みな行き届いた御仕方じゃ。なれども御三代の当主と来ては、いやはや何と言うか、売家《うりいえ》と唐様で書く三代目どころの騒ぎではござりませぬわい。今のその目篇がちときびしすぎてな、江戸の女共を喰いあきたせいでおじゃるのか、それともまた田舎育ちの土女共が味変り致してよいためでおじゃるのか、どちらがどうやら存ぜぬことじゃが、所労保養《しょろうほよう》のお暇を願ったとやらにて、ぶらりとこの月初めに知行所へお帰り召さったのじゃ。ところが、もうそのあくる日からちょくちょくと早速にあれをお始めでござるわい。それとても、いやはや、もう論外でな、きのうまでに丁度十一人じゃ」
「と申すと?」
「人身御供《ひとみごくう》におシャブリ
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