ョロヒョロ、ピイヒョロヒョロと、たそがれかけた夕空高く囀《さえず》ってこのあたり野州《やしゅう》の山路に毎年訪れる、一名霜鳥との称のある渡り鳥のツグミの群が、啼いて群れて通っていったからとて不思議はないのです。それから百舌《もず》に頬白《ほおじろ》、頬白がいる位だから、里の田の畔《あぜ》、稲叢《いなむら》のあたりに、こまッちゃくれた雀共が、仔細ありげにピョンピョンと飛び跳ねながら、群れたかっていたとてさらに不思議はない。随ってまた小鳥がいる以上は、それらの小鳥を狙う鳥刺しがひとりや二人|徘徊《はいかい》していたとても、何の不思議はない筈なのに、ふらりふらりとやりながら何気なくひょいと見ると、何と言う里の何と言う鎮守であるか、そこの街道脇につづいた鎮守の森の外をうろうろしている鳥刺しの容子が、いかにも少し奇怪でした。第一にいぶかしいのは、鳥刺しの癖に鳥を刺そうとしていないのです。型の如くトリモチ竿の長いのを手にしてはいるが、枝にも梢にも雀がいるのに一向刺そうともしないで、森のまわりを抜き足差し足でうろうろとしながら、何を探そうというのか、しきりと中の容子を覗き見している気勢《けはい》でし
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