止するだろうと思われたのに、そうではないのです。
「くくらッしゃい! くくらッしゃい! 殺してしまわばあとが面倒じゃ。殺さずにくくらッしゃい! 以後の見せしめじゃ。くくッて痛い目にあわさッしゃい!」
さすがに虐殺することだけは制止したが、自身先に立って手槍を擬《ぎ》しながら、鳥刺しの逃げ去ろうとした行く手を遮断すると、農民達に命じてこれを搦め捕らせようとさせました。しかしそのとき、すいすいと足早に近寄って遮切《さえぎ》ったのは主水之介です。手にしていたモチ竿を投げすてながら、襲いかかろうとしていた農民達を軽く左右にはねのけて、ぴたり、鳥刺しをうしろに庇《かば》うと、静かに、だが、鋭い威嚇《いかく》の声を先ず放ちました。
「控えおらぬか。騒ぐでない。何をするのじゃ」
「何だと!」
「邪魔ひろぐねえ」
「どこから出て来やがったんだッ」
「退《ど》きやがれッ。退きやがれッ。退かねえとうぬも一緒に痛え目にあうぞッ」
どッと口々に犇《ひし》めき叫びながら襲いかかろうとしたのを、
「控えろと申すに控えおらぬか! これをみい! 身共もろ共痛い目にあわすはよいが、とくと先ずこれを見てから命と二人で
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