る程の大金でござります。そちらのお馬子衆、あなた方もお拾いではござんせんでしたか」
「拾うもんけえ。そんなでけえ蛙を呑んだ財布を拾や、鈴など鳴らしてまごまごしちゃいねえやな、おいらも知らねえぜ」
「そうでござりまするか。仕方がござんせぬ。お騒がせ致しまして恐れ入りまする。念のため宿までいって探して参ります」
うろうろと道を探し探し降っていったのを見送りながら、馬子達がにやり目と目を見合わせると、不意に謎のようなことを囁き合いました。
「三公、どうもちッと臭えぜ」
「そうよな。虫も殺さねえような面《つら》していやがったが、あのオボコがそうかも知れねえぜ、大年増に化けたり、娘に化けたりするッて噂だからな。やったかも知れねえよ」
ちらりとその言葉を耳に入れた早乙女主水之介が、聞き流す筈はないのです。
「何じゃ、何じゃ。化けるとは何の話じゃ」
「いいえね。今の青僧《あおぞう》の五十両ですが、ありゃたしかに掏摸れたんですよ」
「どうしてまたそれを知ってじゃ」
「いるんですよ、一匹この街道にね。それも祠堂金《しどうきん》ばかり狙う女スリだっていうんですがね、三十位の大年増に化けたかと思うと、十
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