のよ」
「顔に似合わず素ばしッこかったからね。どッかへ隠れてとぐろを巻いているんでしょうよ。いえ、なにね、それならそれでまた工夫もあると言うもんでござんす。実は今あの通りね、ほら、あそこの経堂のきわに大連の御講中が練り込んで来ておりますね。何でもありゃお江戸日本橋の御講中だとかいう話なんだ。日本橋と言えば土一升金一升と言う位なんだからね、きっとお金持ち揃いに違えねえんですよ。だから、今夜あの連中がお籠り堂へ籠ったところを狙って、こんな晩に大稼ぎとあの女的《あまてき》がお出ましになるに違えねえからね、どうでござんす。智慧はねえが力技は自慢のあッしなんだ。どじょうにして頂いたお礼心にね、あっしもお手伝いしたって構わねえんだが、殿様も旅のお慰みにお籠りなさって、化けて出たところを野郎とばかり、その眉間の傷でとッちめなすっちゃどうですかい」
「面白い。ドンツク太鼓をききながらお籠りするのも話の種になってよかろうぞ、万事の手筈せい」
「へッへへ。手筈と言ったって、おいらにゃこれがありゃいいんだ。酔がさめて夜半にまた喧嘩虫が起きるとならねえからね。ふんだんに油を流し込んでおくべえと、さっきの小判の
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