に申すのでな、下情に通しておくは即ち政道第一の心掛けと、身が館《やかた》でも戯れに申しておるのじゃ。その方はどうじゃな。別してねじ切った奴が所望かな、それとも薄いが所望《しょもう》かな」
「なるほど、いや、お気軽に渡らせられまして、なかなか味あるお言葉にござります。手前は至って濃い茶が好物、では恐れながら、ひとねじりねじ切って頂きとうござります」
「うん左様か左様か、ねじ切った奴が好物とはなかなか話せるぞ、石斎、石斎、丹田に力を入れての、うんときびしくねじ切ってつかわせよ」
 磊落《らいらく》に言いながら、お自らもとろりと見るからに苦そうな一服を楽しみながら用いると、気性に促しました。
「時に、目通りの用向きは何じゃな」
「はっ。実は余の儀でござりませぬ。こん日、島津の太守がここを通行の筈にござりまするが、御前はそのことを御承知に渡らせられましょうか」
「うんうん、それならばよう存じおる、存じおる。修理太夫には久しい前からの貸し分があるのでな、こうして身も先程から待ち構えておるのじゃ」
「いかさま、お貸しの分と申しますると」
「いやなにな、つまりあれじゃ、島津の太守、大禄|喰《は》みな 
前へ 
次へ 
全48ページ中37ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング