を持ちまして御嘉納《ごかのう》賜わりますれば恐悦にござりまする……」
 近侍の者に捧持させて、何よりも先ずそれが事の第一と言わぬばかりに、土州侯が恭々しく運ばせたのは、けっこうやかな島台にうず高く盛りあげた土産の品の数々です。曲※[#「※」は「祿−示」、第3水準1−84−27、146−上−12]《きょくろく》の上からその品々を見るような見ないようなおまなざしで、いとも鷹揚《おうよう》にじろりとやると、おっしゃったお言葉がまた、この上もなく松平の御前らしい鷹揚さでした。
「ほほう、これはまたいかいお気の毒じゃな。毎度々々よく御気がついて痛み入る次第じゃ。折角のお志、無にするも失礼ゆえ、遠慮のう頂戴致そうわい。以後はな、成べくこのような事致さぬようにな」
「はっ、いえ……。取るにも足らぬ粗品、さっそくに御嘉納賜わりまして、土州、面目にござります。では、道中急ぎまするゆえ、御ゆるりと――」
「うんうん、左様左様、手製の粗茶なと参らすとよろしいが、もう御出かけかな。では、遠路のことゆえ、御身も道中堅固にな、国元に帰らば御内室なぞにもよろしくな。――いや、言ううちに、妙庵《みょうあん》、妙庵、ハ 
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