に物を言わせてつかわそうぞ」
静かに呟きながら、愛用の一刀を音もなく抜き払いました。刹那! 何ともどうももう仕方がない。ひとたびわが退屈男の腰なる秋水が鞘走ったとならば、何ともどうももう仕方がないのです。
「みい!」
静かな声と共に、その秋水が音もなく最初のひとりを見舞いました。しかし、斬ったのはその右腕です。スパリと一二尺血しぶきもろとも、飛んで落ちたのを見眺めながら、何ともどうも不気味な微笑でした。にんめり微笑しつつ、静かに言いました。
「ともかくも役儀を持ったその方達じゃ。片腕ずつ殺《そ》いでおくのも却って面白かろうぞ。ほら、今度はそッちの獅子鼻じゃ。――すういと痛くないように斬ってつかわすぞ」
言ったかと思うと、本当にすういと斬りとるのだから、どうも仕方がないのです。と見て、残った二人が必死に逃げのびようとしたのを、裂帛《れっぱく》の一声!
「またぬかッ。その方共を逃がしては、それこそまさしく片手落ちじゃ。ほうら! 両名一緒に一本ずつ土産に貰うぞッ」
さッとひと飛びに追い迫って、左右に一刀斬り!
「四本落ちたかッ。ようしッ。もう小者達には用がない。早う消えおろうぞッ」
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