こぺこ詫び[#「詫び」は底本では「詑び」と誤植]てはいるが、あの眼の配り、腰の構えは、先ず免許皆伝も奥義《おうぎ》以上の腕前かな。みていろ、今にあの若者が猛虎のように牙を出すから」
 言うか言わないかの時でした。しきりと詫び[#「詫び」は底本では「詑び」と誤植]つづけているのに、対手の四人はあくまでも許そうとしなかったので、若衆はその執拗さに呆れたもののごとく、一二歩うしろへ身を引くと、やんわり片手を飾り造りの佩刀《はいとう》にかけたかと見えたが、果然、謎の宗十郎頭巾が折紙つけたごとくその態度が一変いたしました。
「けだ物共めがッ、人間の皮をかむっているなら、も少し聞き分けがあるじゃろうと存じていたが、それ程斬られて見たくば、所望通り対手になってつかわすわッ。抜けッ、抜けッ、抜いて参れッ」
 裂帛《れっぱく》の美声を放って、さッと玉散る刄《やいば》を抜いて放つと、双頬《そうきょう》にほのぼのとした紅色を見せながら、颯爽《さっそう》として四人の者の方ににじりよりました。それも、今迄柔弱とばかり見えたのが、俄然一変したのですから、その冴えまさった美しさというものはない。しかも、その剣気のす
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