ばらしさ!――不意を打たれて四人はたじたじとたじろぎました。しかし、もともと売った喧嘩です。
「けだ物共とは何ごとじゃ! 抜きさえすればそれで本望、では各々、用意の通りぬかり給うな」
四十がらみの分別盛りが下知を与えると、唯の喧嘩と思いきや、意外にもすでに前から計画してでもあったかのごとくに諜し合せながら、ぎらりと刄襖《はぶすま》をつくりました。
それと見てにんめり微笑しながら、静かに呟いたものは長割下水のお殿様と言われた不審の宗十郎頭巾です。
「ほほう、あの若衆髷、揚心流《ようしんりゅう》の小太刀を嗜《たしな》んでいると見えるな。お気の毒に、あの奥義では四人の大男共、この人前でさんざ赤恥を掻かねばならぬぞ。そらそら、言ううちに怪《あや》しくなったようじゃな、みろ、みろ、左の奴が先にやられるぞ」
呟《つぶや》いたとき、果然若衆の前髪がばらばらと額先で揺れ動いたと見えたが、ひらりと蝶のように大振袖が翻った途端――言葉のごとく左翼のいち人が、長々と地に這いつくばりました。しかし床しいことに、峰打ちの血を見せない急所攻めです。それだけに怒り立ったのはあとの三人達でした。
「小僧! 味な
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