まけに因縁のつけように事を欠いて、あの若衆の顔が綺麗すぎるから癪に障ると、こんな事をぬかしゃがるんで、聞いてるものだって腹が立つな当り前じゃござんせんか」
「ほほう、なかなか洒落れた事を申しおるな。それで、わしに何をせよと申すのじゃ」
「知れたこっちゃござんせんか。あんまり可哀えそうだから、何とかしてあの若衆を救ってあげておくんなさいよ」
「迷惑な事になったものじゃな。どれどれ、では一見してつかわそう――」
一向に無感激な物腰で、ふところ手をやったままのっそり人垣の中へ這入ってゆくと、じろり中の様子を一|瞥《べつ》したようであったが、殆んどそれと同時です。にんめり微笑を見せると事もなげに言いました。
「折角じゃが、どうやらわしの助勢を待つ迄の事はなさそうじゃよ」
「なんでござんす! じゃ、殿様のお力でも、あの四人には敵《かな》わねえとおっしゃるんですかい」
「ではない、あの若者ひとりでも沢山すぎると申すのじゃ」
「冗談おっしゃいますなよ! 対手はあの通り強そうなのが四人も揃っているんだもの、どう見たって若衆に分があるたあ思えねえじゃござんせんか」
「それが大きな見当違いさ。ああしてぺ
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