も出すがいやじゃが、人間一匹を拾い出すとは、なかなか味な探し物じゃわい。心得た。いかにもこの兄が力になってつかわすぞ」
「ま! では、あの、菊の願い叶えて下さりまするか」
「自慢せい。自慢せい。そちも一緒になって自慢せい。早乙女主水之介は退屈する時は人並以上に退屈するが、いざ起つとならばこの通り、諸羽流《もろはりゅう》と直参千二百石の音がするわい」
「ま! うれしゅうござります、嬉しゅうござります! では、あの、今よりすぐとお出かけ下さりまするか」
「急《せ》かでも参る参る。こうならば退屈払いになる事ゆえ、夜半だろうと夜明けだろうと参ってつかわすが、一体そちのいとしい男とか申すのは、どこの何と言われる方じゃ」
「榊原大内記《さかきばらだいないき》様のお下屋敷にお仕えの、霧島京弥《きりしまきょうや》と申される方でござります」
「えろう優しい名前じゃな。では、その、京弥どのとやらを手土産にして拾って参らばよいのじゃな」
「あい……、どちらになりと御気ままに……」
「真赤な顔をいたして可愛い奴めが! どちらになりとはなにを申すぞ、首尾ようつれて参ったら、のろけを聞かしたその罰に、うんと芋粥の
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