若やいだ声が耳を刺しました。
「久どん! 久どん! いけないよ。なんだね、おまえ、だいじなお宝じゃないか。小判をおもちゃになんぞするもんじゃないよ」
「いいえ、お嬢さま、おもちゃにしているんじゃねえんですよ。精出して音いろを覚えろ、にせの小判とほんものとでは音が違うからと、おだんなさまがおっしゃったんで、音いろを聞き分けているんですよ」
「うそおっしゃい! そんないたずらをしているうちに、また一枚どこかへなくなったというつもりだろう。おとといもそうやっているうちに、小粒が一つどこかへなくなってしまって、出ずじまいじゃないか、ほかのだれをごまかそうとも、このわたしばかりはごまかせないよ。音いろを聞きたかったら、この目の前でおやり!」
 権高に店員をしかっているあんばい、むろんこの家の娘にちがいないが、どうやら店のこと、金の出入りの采配《さいはい》も、その娘が切りまわしているらしい様子でした。
 ひょいとのぞいてみると十八、九、――品はないが、まずまずべっぴんの部類です。
「繁盛だな……」
「いらっしゃい。どうぞ、さあどうぞ。そこではお冷えなさいます。こちらへお掛けなさいまし」
 あいきょ
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