んだよ。どれか一枚にドスを刺しこんで隠してあるにちげえねえ。一枚のこらず返してみな」
 あったのです。上からちょうど三枚め、畳の裏腹のわら心へ、ぐいと深くさしこんでたくみに隠してあったのです。
「そうだろう。どうだえ、みんな、そろそろこわくなりゃしねえかえ。こりゃほんの右門流の序の口よ。ドスが出てきたからにゃ、下手人もおまえら十八人のうちにいるにちげえねえんだ。拷問、火責め、お次はどんな手が出るかしらねえが、急がねえところがまた右門流の十八番でな。この牢格子の中へ入れておきゃ、下手人を飼っておくようなもんだ。起きたばかりで、おまえらも腹がすいているだろう。ゆるゆると煎《せん》じてやるから、まずめしでも食べな。――おうい。小者! 小者!」
 不思議でした。
 なにを思いついたか、ふいとうしろをふりかえると、気味のわるいほどにもおちついて、変なときに変なことを、ひょっくりと命じました。
「食わしてやんな。がつがつしているだろうからな。おつけがどうの、おしるがしみったれだのと、ろくでもねえことをぬかしやがったから、けさばかりはたっぷりつけてやんなよ。いいかい。どんどんお代わりしてやんな」
 
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