っていたなら、お礼は五十両さしあげる、と、こんなに書いてあったのでござります。変なお頼みとは思いましたが、五十両なぞという大金は、わたくしふぜいが二年三年身を粉にして働いてもなかなか手にはいるものではござりませぬゆえ、つい欲にかられて道具の用意をしながら出てまいりますると、いきなり駕籠屋が力まかせに押えつけて、目隠しをしてしまったんですよ。それから先が不思議、どんどん飛ばしていって、目隠しのまま連れ込んだ家が、どこのどなたの住まいかわかりませぬが、たしかに薬屋なんでござんす」
「なにッ、薬屋!」
「そうなんでござんす。ぷうんと家じゅうに薬のにおいが漂っておりましたからね。はてな、変なことをなさるなと思っておりましたら、だれともわからぬ人がそでをひっぱって、ぐんぐん裏座敷らしいところへ連れていきましたのでな。いうとおりになっていろというのはこのことだろうと思って覚悟をしておりますると、男とも女とも、年寄りとも、若い者ともわからぬ声で、もうよい、目隠しを取れ、といいましたゆえ、こわごわ取りはずしてみますると、目の前に紙切れが置いてあって、それに変なことが書いてあるんでござんす。いま障子の穴
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