と、よろしく歓をつくしているのです。
「やにさがっているな」
「なんでござんす! 不意にひとのへやへはいってきて、失礼な! なんの用がおありでござんす!」
「ちっとばかりお上の御用筋さ。正直に申し立てろよ。おとついの夜から姿をかくして、ここへ居つづけしているのを突きとめたからこそ、わざわざお越しあそばしたんだ。安い金では、二日もとぐろが巻けるわけはない。どこから金の茶がまが降ってきたんだ」
「恐れ入りました。お上のかたがたでござりましたか。それとも存ぜず、とんだぶちょうほうな口をききましてあいすみませぬ。いいえ、お役人衆ならちょうどさいわい、当人のてまえも気味わるく思っておりましたやさきでござりますゆえ、何もかも申ましょうよ。じつは、この金の出どころが少し不思議でござりましてな」
「なにッ。不思議な出どころ! どうして手にはいった金だ」
「どうもこうもござんせぬ。ちょうどおとついの日暮れ少しすぎでござりました。駕籠屋が突然、てまえのところへだれかさっぱり差し出し人のわからぬ書面を持ってまいりましたのでな。何心なくあけてみると、特にあなたに朱彫りがしていただきたい、こちらのするとおりにな
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