見えるのです。
「客があるぞ。鉄火な女だな」
「おどろいたね。げたを見ただけで、そんなことがわかるんですかい」
「目玉が違わあ。こんなことぐれえわからねえんでどうするんだ。脱ぎ方をみろ。小笠原《おがさわら》流にも今川流にも、こんな無作法な脱ぎ方はねえや。この鼻緒ならばまず年のころは二十一、二、あっちへ一方、こっちへ一方横向きにゆがんで脱いであるぐあいじゃ、気性もあっちへ一方、こっちへ一方、細かいことのきらいな鉄火ものだよ。いま彫っているさいちゅうにちげえねえ。いずれおまえのことだから、女の膚でも見りゃぽうっとなるにちげえあるめえが、のぼせて変な声を出しちゃいけねえぜ」
下か、二階か、土間にたたずんでけはいを探ると、どうやら仕事場ははしご段の上らしいのでした。
案内も請わず、ぎしぎしと鳴らしながら上がっていって、静かに障子をあけながらじろりとのぞくと、まさにそれは奇怪な絵模様でした。洗い髪、二十一、二のいかさま鉄火ものらしい若い女がなやましくもすべすべとした全裸体を惜しげもなくそこへさらしながら人魚のごとく長々と横たわって、むっちりと盛りあがった肉の膚に、吸いつけられでもしたかのごと
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