んぞいつでもなでられるんだ。勇ましくぱっぱっと起きなせえよ!」
「うるさい。黙ってろ。その七造を待っているんじゃねえか。七年まえの恨みがあるとかいったはずだ。だんごでも食いなよ」
「え……?」
「えじゃないよ、何かといえばすぐにがんがんやりだして、のぼせが出るじゃねえか。下男だか若党だか知らねえが、その七造が判じ絵文《えぶみ》の書き手、おくにの誘い手、ふたりでいち早く巡礼に化けてからどこかへ高飛びしようと来てみたのが、道行き相手のおくにめがまだ姿を見せねえので、あの笠を目じるしに掛けておきながら、浅草へでも捜しがてら迎えに行ったんだよ。闇男屋敷とやらにも必ず何かひっかかりがあるにちげえねえ。いいや、気になるのはその浅草だ。あば敬の親方、へまをやって、女も野郎もいっしょに取り逃がしたかもしれねえから、むだ鳴りするひまがあったら、ひとっ走り川を渡って様子を見にでもいってきなよ」
「ちぇッ。うれしいことになりやがったね。事がそうと決まりゃ、たちまちこの男、ごきげんが直るんだから、われながら自慢してやりてえんだ。べらぼうめ。舟の中で恨みを晴らしてやらあ。ねえさん! だんごを五、六本もらっていく
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