のようなよごれものといっしょに投げ込んでおきますようでは、心がけのほどもまずまずあまり上等ではござらぬゆえ、逃げ隠れたところも、ばくち宿か、あばずれ者の根城か、いずれにいたせあまり感心のできる場所ではござるまい。ただ一つ、特に胸にたたんでおかねばならぬことは、この紙片に見える、こっちがあぶなくなった、とある一句でござる。右左、どの道をたどって女の跡を追うにしても、道の奥に壁、突き当たったその壁の奥になお道があることをお覚悟してかかるが肝心じゃ。てまえは、そなたがお選みなすった残りでよろしゅうござる。こうなれば急ぐが第一、貴殿、いずれをお取りじゃ」
 これには敬四郎、はたと当惑したにちがいない。両方ひとり占めにしたいはやまやまだが、そうすればまた詮議《せんぎ》追跡申しぶんがないが、そもそも二つの道をかぎ出し、探り出し、切り開いてくれたのは、自分ではない、同役右門なのです。しかも、みずからはあとでよい、残りでよいと、公明正大に出られては、あば敬たる者いささかまごつかざるをえないのです。
「えへへ。さあ、おもしれえや。どっちを取るか、腕の分かれめ、てがらのわかれめ、いいや、道のとり方によっち
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