たことでした。
「このとおり調べは悉皆《しっかい》つきました。たどるべき手がかりの道も二つござる。これなる判じ文《ぶみ》を頼りに女の足取りをされてもよい。あるいはまた、亭主の申し条によって、女の行くえを追跡されてもよい。判じ文を唯一の手がかりとなさるならば、貴殿のお知恵によって、絵のところに待っているという三つ刺したくしだんごはいずれの地名か、それをお判じなすってお出かけなさることだ。それとも、亭主の申し条をたよりに足取り追われるならば、乗せていった駕籠宿伊予源から洗いはじめて、たしかに浅草へ願かけにいったかどうか、いったならばそれから先どこへ飛んだか、黄八丈、銀かんざし、黒|繻子《じゅす》帯の女を目あてにびしびしとお洗いたてなさることだ。しかし、いずれにしても女の黒幕には、これなる判じ文でもわかるとおり、男がついておりまするぞ。女の路銀は三両しかござらぬが、男がいるとすればこれに用意があると見なければなりませぬ。さすれば、存外と遠走っているやもしれぬし、もしも浅草あたりへ潜伏したとすれば、この女、なかなかのしたたか者じゃ。その証拠は、これなる守り札の不始末でもわかるはず。尊いお品をこ
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