うに作って、先頭に立った五分|月代《さかやき》こそ、体の構え、目の配り、ひときわ立ちまさっているところを見ると、たしかに当の黒岩清九郎にちがいない。しかも、あたりのけはいを見はばかるようにして、そのまま足早にお蘭の住み家の中へぞろぞろと姿を消しました。
 見ながめるや同時です。
「たいでえびをつったかな。まごまごすりゃ、今度こそ、おめえの首がそっぽへ向くかもしれねえから、小さくなって見物していなよ」
 言い捨てて、伝六をうしろに、ゆうぜんと引っ返していくと、ちょうどその出会いがしら。――気を失ったままでいるお蘭のからだを横抱きにして中から出てきた四人の者と、ぱったり面を合わせました。せつな! 莞爾《かんじ》とうち笑うと、すばらしい名|啖呵《たんか》が飛んでいったものです。
「忘れるねえ! これがお江戸八丁堀のむっつり右門の顔だッ。少しはぴりっとからしがきいたかッ」
「なにッ」
「よッ」
「はかったなッ」
「そうよ、知恵の小引き出しは百箱千箱、こうとにらんだ眼《がん》は狂い知らずだ。張った捕《と》り網にもこぼれはねえが、草香の当て身にもはずれがねえんだ。菜っ切り包丁抜いてくるかッ」
「ほ
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