ざいたなッ。うぬにかぎつけられちゃめんどうと、おどしのくぎを一本刺しておいたが、こうなりゃなおめんどうだッ。二天流の奥義、見舞ってやるわッ」
二本、三本、四本、いっせいに抜いて放って、さっと刃ぶすま固めながら小雨の表におどり出たのを、とどめの名啖呵です。
「笑わしやがらあ! これが折り紙つきの草香流だッ。お味はどんなもんかい」
出たとならば、一陣、一風。二天流黒岩清九郎が赤岩清九郎になろうとも、右門秘蔵草香の当て身の前には歯も立たないのです。ばたり、ばたりと、一瞬の間に四人は雨どろの道にはいつくばりました。
「見ろいッ。弟子《でし》だか門人だか知らねえが、片棒かついだやつにゃ用はあるめえ。加賀大納言家じゃ清九郎一人に御用がおありだろうから、伝あにい、いつものとおりこれをなわにして自身番へしょっぴいてな、ご進物でござりますとすぐにお屋敷へ届けるよう、計らってきなよ。――おっと、待ったり。懐中にでもゆすりの種のかよわせ文《ぶみ》があるだろう。地獄へ行くには目の毒だ。功徳のためにいただこうよ」
果然、ふところ深くに忍ばせていたのをすばやく抜きとっておくと、何も知らぬげに気を失っていたお
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