にかからぬよう持ち運んだとかぬかしておったが、数も七つ、刻も七ツ、駕籠も七つと気味のわりい七ずくめから察するに、どうやらこりゃただのいたずらじゃねえかもしれねえぜ。ましてや、持ちまわったところはご将軍さまのお住まいのお城のぐるりだ。凶か吉か何のおまじないか知らねえが、どっちにしてもただごとじゃねえぞ!」
「ちくしょうめッ。さあいけねえ! さあいけねえ! さあいけねえぞ! 容易ならんことになりゃがったね。さあいけねえぞ!」
 ことごとくうろたえて、伝六がことごとくあわてだしたのは当然でした。
「気に入らねえんだ。食い物だけに、あっしゃ橙なんぞをおまじないにしたことがしゃくにさわるんですよ! なんでしょうな! え! ちょっと! なんのおまじないでしょうね!」
「…………」
「じれってえな! そんなに思わせぶりをしねえで、すぱっといやアいいんだ、すぱっとね、こんなものを七つの駕籠で七ツ刻《どき》から持ちまわりゃ、なんのおまじないになるんですかい。ね! ちょっと! え? だんな!」
「騒々しいやつだね。黙ってろ。なんのおまじないかわからねえからこそ、こうしてじっと考え込んでいるじゃねえか。気味
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