右門捕物帖
七七の橙
佐々木味津三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)駕籠《かご》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)からめ手|詮議《せんぎ》は

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)叱※[#「口+它」、第3水準1−14−88]《しった》
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 その第二十六番てがらです。
 物語の起きたのは年改まった正月のそうそう。それも七草がゆのその七日の朝でした。起きても御慶、寝ても御慶の三カ日はとうにすぎたが、なにしろまだめでたいし、松の内はお昼勤めとお許しの出ているその出仕には時刻がまだ少し早いし、朝の間のそのひとときを、ふくふくとこたつに寝そべりながら、むっつり右門のお正月はやっぱりこれじゃといわぬばかりに、そろりそろりとあごをなでては一本、またなでては一本抜いていると、
「へへへ……へへへ」
 不意に庭先で、いいようもなく奇怪な声をあげて笑う者があるのです。
「へへへ……へへへ」
 笑っておいてからまた、いかにも人を小バカ
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