のわりい細工がしてあるかもしれねえ。中を改めてみるから、その三宝をちょっとこっちへ貸しな」
引きよせて三宝の上にその一個をうちのせながら、すういと静かにわきざしでまっ二つに切り裂いたせつな! 果然、中からにょっきりと奇怪なひと品が現われました。針です! 針です! ぶきみに妖々《ようよう》と研《と》ぎすまされた長い針なのです。
「ちくしょうッ。気味のわりいものが出やがったね。ぞおッとなりゃがった! なんです! なんです!」
「…………」
「え! だんな! 針じゃござんせんか! ミスヤのもめん針にしちゃ長すぎるし、畳針にしちゃ短すぎるし、なんです! なんです! いってえなんの針ですかい!」
やかましくそばから鳴りたったのを、黙々としながらあごをなでなで、ややしばしじいっと見守っていましたが、やがて、ずばりとさえまさった一語が放たれました。
「含み針だッ。たしかにこりゃ含み針だぜ!」
「え……?」
「一|太刀《たち》、二|槍《やり》、三|鎖鎌《くさりがま》、四には手裏剣、五に含み針と数え歌にもあるじゃねえか。口に含んでこれを一本急所に吹き込んだら、大の男も命をとられるというあの含み針だよ
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