難はだんなの災難なんだから、仲よくいっしょになって心配しておくんなせえよ。え? ちょいと! ちゃんとした名まえがあるのに、わざとこんな人泣かせをしなくたってもいいじゃござんせんか。この目はなんですかよ。三つの輪丸は、なんのまじねえですかよ」
 たちまち横からうるさく鳴りだしたのを、名人は黙々としてあごをなでなでじいっと、ややしばしうち考えていましたが、やがて、あのさわやかな微笑がふたたび浮かんだかと思われるやせつな!
「ウフフフ。なんでえ、なんでえ。来てみればさほどでもなし富士の山っていうやつさ。とんだ板橋のご親類だよ。――のう、ねえや!」
 しゅッしゅッと一本|独鈷《どっこ》をしごき直して、ずっしりと蝋色鞘《ろいろざや》を握りしめると、静かに問いなじりました。
「正直にいわなくちゃいけねえぜ。この豆本も、おっかあがここへ隠したんだろうな」
「…………」
「え? だいじない。だいじない。しかりゃしねえから、隠さずにいわなくちゃいけないよ。のう! そうだろう。おっかあがしまっておいて行ったんだろうな」
「あい、あの、そうでござります、そうでござります。出かけるまえにいっしょうけんめいこの
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