右門捕物帖
卒塔婆を祭った米びつ
佐々木味津三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)鳶《とび》ノ巣山《すやま》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)仲秋|上浣《じょうかん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#疑問符感嘆符、1−8−77]
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     1

 その第二十五番てがらです。
 事の起きたのは仲秋|上浣《じょうかん》。
 鳶《とび》ノ巣山《すやま》初陣《ういじん》を自慢の大久保|彦左《ひこざ》があとにも先にもたった一度|詠《よ》んだという句に、
「おれまでが朝寝をしたわい月の宿」
 という珍奇無双なのがあるそうですが、月に浮かれて夜ふかしをせずとも、この季節ぐらい、まことにどうも宵臥《よいぶ》し千両、朝寝万両の寝ごこちがいい時候というものはない。やかまし屋で、癇持《かんも》ちで、年が年じゅう朝早くからがみがみと人の世話をやいていないことには、どうにも溜飲《りゅういん》が起こって胃の心持ちがよくないとまでいわれた彦左の雷
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