ゃござんせんか。そちらの浪人者が下手人だというのもちっと不思議だが、いったいどこでお見つけになったんですかい」
ずばりとみごとにホシをさされてぐっと二の句につまった敬四郎の様子を見かねたものか、そばからつじ役人のひとりが代わって答えました。
「なるほどね。そうおっしゃりゃ少し様子がおかしいが、でもこの浪人がたしかにやったんですよ。じつあ、敬だんなのおさしずがあったんでね、市《いち》ガ谷《や》八幡《はちまん》の境内に張っていたら、このおきのどくなお侍が向こうからやって来たのを見すまして、そっちの浪人者がいきなりのど輪を刺し通してから、懐中物を捜していやがったんでね、刻限の似通っているぐあいといい、首筋を刺したぐあいといい、どうやらホシにかかわりのある野郎だとにらんで、いやおうなくしょっぴいてきたんですよ」
「つがもねえ、まだ下手人のあがらねえのを世間がいろいろあしざまにいってるんで、あせってのことでしょうが、おたげえお上御用を承っている仲間なんだ。もう少し見通しのきいた仕事をしねえと笑われますぜ。懐中物をねらっていたというのが大にせ者だ。論より証拠、今までの死骸はみんな紙入れもきんちゃ
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