右門捕物帖
のろいのわら人形
佐々木味津三

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)宵々《よいよい》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)天地|蕭条《しょうじょう》として

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから1字下げ]
−−

     1

 ――その第二十四番てがらです。
 時は八月初旬。むろん旧暦ですから今の九月ですが、宵々《よいよい》ごとにそろそろと虫が鳴きだして、一年十二カ月を通じ、この月ぐらい人の世が心細く、天地|蕭条《しょうじょう》として死にたくなる月というものはない。
 だからというわけでもあるまいが、どうも少し伝六の様子がおかしいのです。朝といえばまずなにをおいても駆けつけて、名人の身のまわりの世話はいうまでもないこと、ふきそうじから食事万端、なにくれとなくやるのがしきたりであるのに、待てど暮らせどいっこうに姿を見せないので、いぶかりながらひとり住まいのそのお組小屋へいってみると、ぶらり――とくくっていたら大騒ぎですが、どう見てもそのかっこうは、これからくくろうとする人そっくりなのでした。そ
次へ
全69ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 味津三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング