出したあのかんざしが、二三春の持ち物であることは確かです。確かとしたなら、二三春に対する幽霊水の下手人としての疑いは、ますます深まるばかりでした。だのに、その二三春がいまや容易ならんことにも人手にかかっているのです。――当然のごとくに、三つの疑惑がわき上がりました。
 幽霊水のほんとうの下手人はほかにあるのではないかという疑いがその一つ。
 その者が罪を二三春に着せるために、かんざしを盗み取って、びょうぶの裏に刺してきたのではないかという疑いがその二つ。
 それがあばかれそうになったので、罪をおおいかくさんために二三春を殺したのではないかという疑惑がその三つ。
「ちとこれはふた知恵三知恵、大出しにしなくちゃなるまいかな」
 つぶやきながら、しきりとあごをなでなで、しきりとあたりを見調べていたかと思われましたが、せつな!
「なんでえ! なんでえ! おどすにもほどがあらあ。ウッフフ、アッハハ。だから、べっぴんというやつあ、魔がさしていけねえんだ。のう、伝あにい!」
 とつぜん、名人が何を発見したか、爆発するように笑いだしたので、肝をつぶしたのは伝あにいです。
「びっくりするじゃありませんか
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