。ど、ど、どうしたんです。また何か怨霊《おんりょう》でもが出ましたかい」
「出たとも、出たとも。すんでのところ、むっつりの右門も大恥かくところだったよ。こりゃなんだぜ、人手にかかったんじゃねえ、まさに二三春自身が自分で命をちぢめたんだぜ」
「冗、冗、冗談も休みやすみおっしゃいませよ。猿《えて》の手にしたっても、てめえの背中へドスを突き刺すような器用なまねはできねえんだ。ましてや、こんなかわいいべっぴんの手が、背中のまんなかに回るほど長かったら、首もろくろっ首のはずですよ」
「ところが、ご自身でお死にあそばしたんだから、なんともしようがねえじゃねえか。まあ、そのうしろの柱に結びつけてある品物をとっくり見ろよ」
指さしたのは、二三春の死骸《しがい》のちょうどまうしろになっている柱の下のほうに、しっかり結わいつけてあるその名もなまめかしい江戸紫のしごきです。
「はあてね。七つ屋へこかしこんでも一両がところは物をいいそうな上等のちりめんだが、いってえこんなところに結わいつけて、なんのまじないですかね」
「それが手品の種よ。なんのまじないだか、種あかししてみたかったら、そこのしごきのひとねじね
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