右門捕物帖
幽霊水
佐々木味津三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)二日《ふつか》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)善光寺|辰《たつ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)「…………※[#疑問符感嘆符、1−8−77]」
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     1

 その二十三番てがらです。
 時は真夏。それもお盆のまえです。なにしろ暑い。旧暦だからちょうど土用さなかです。だから、なおさら暑い。
「べらぼうめ、心がけが違うんだ、心がけがな。おいらは日ごろ善根を施してあるんで、ちゃあんとこういうとき、暑くねえようにお天道さまが特別にかばってくださるんだ。というものの――」
 いばってみたが、伝六とて暑いのに変わりはないのです。しかし、もうお盆はあと二日《ふつか》ののちに迫っていたので、おりからちょうど非番だったのをさいわい、のこぎり、かんな、のみ、かなづちなぞ大工の七つ道具を、ちんちんと昼日の照りつける庭先に持ち出しながら、しきりと今日さまにおせじを使って仕
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