づちをうつない。町方役人というものはな。腕より、度胸より――」
「さよう、さよう」
「わかってるのかい」
「いいえ」
「なんでえ、わかりもしねえのに、さようさようもねえじゃねえか。町方役人の上玉と下玉の分かれめはな、腕より度胸より、これとこれだよ」
 指さしたのは目と頭! ――まことにしかり、第一は鑑識鑑定の目の力、第二は推理判断判定の頭脳なのです。
「だから――」
「たまらねえな。駕籠《かご》ですかい」
「違うよ。近所へいって聞いてきな」
「え……?」
「わからねえのか。近所へいって、ここの家の様子を洗ってくるんだ」
「いいえ、それならわかっていますが、賽ですよ。さいころですよ。金粉を見つけ出して、ぴかぴかと目を光らしたようですが、こいつのどこが不思議なんですかい」
「しようがねえな。こんなものぐらい知らなくて、ご番所の手先は勤まらねえぜ。いんちきばくちのいかさま師が使う仕掛けのコロじゃねえかよ」
「へえ! これがね」
 驚いたのも当然です。今はもちろんご法度《はっと》だから見たくも見られますまいが、江戸のころは鉛仕掛け、針の仕掛け、あるいはこの種の金粉仕掛けのいんちきコロが、ずいぶ
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